僕は耳が悪いと思う。これは聴力が弱くて音が聞き取れないという訳ではなく、聞いた内容を頭の中で処理するのが壊滅的にヘタクソということである。
たとえば、僕が学校で先生とこのような会話をしたとしよう。
先生「ちょっといい?これ職員室まで運んでくれる?」
ぼく「分かりました」
先生「先生の机に置いといてね。机の場所は分かる?」
ぼく「はい、大丈夫です」
一見普通の会話だと思う。しかし、僕の脳内を覗いてみると、こんな感じになっている。
先生「ちょっといい?これ職員室まで運んでくれる?」
ぼく「分かりました」(あ、先生だ。これ?)
先生「先生の机に置いといてね。机の場所は分かる?」
ぼく「はい、大丈夫です」(ああ、これを運ぶ…)
(これを職員室まで運ぶ…)
(職員室の先生の机…)
(なるほど、完全に理解した)
このように、僕は先生が述べた内容を理解するのにかなりラグがある。
ここでのポイントは
・先生の机の場所などを思い出そうとしている訳ではなく、先生の発言そのものを理解するのに時間がかかっていること。
・理解していないのに流れで返事をしていること。
の2点である。これは非常に厄介な問題である。実際に先生の机の場所を思い出そうとする時はさらに思考に時間がかかるし、それで机の場所が思い出せなかったとしても、会話中では既に大丈夫ですと言ってしまっている。どうしようもないポンコツである。
これだけではない。なんと僕のポンコツぶりがさらに顕著になる場合が存在するのだ。それは僕が何か考えごとをしている時に話しかけられた時である。
たとえば、僕が放課後に数学を勉強している時、先生と先程の会話をしたと仮定して僕の脳内を覗いてみよう。
ぼく(うーん、これは間違いなく部分分数分解ですね…)
先生「ちょっといい?これ職員室まで運んでくれる?」
ぼく「分かりました」(これは間違いなく部分分数分解…)
先生「先生の机に置いといてね。机の場所は分かる?」
ぼく「はい、大丈夫です」(部分分数分解…)
(ぶぶんぶんすうぶんかい)
(ぶぶんぶんすうぶんぶん)
(ぶぶんぶんぶんぶんぶん)
(あかん部分分数分解できへん。恒等式解こ)
(ん、そういえばさっき先生がなんか言っとった気がする…)
こんな感じである。僕はマルチタスク能力が壊滅的に欠如しているため、急に話しかけられると脳が対応できない。どうしようもないクソポンコツである。
僕はこんなポンコツ人間なので、人の話を聞いているように見えて実は全く聞いていなかったり、全く違うことを考えていたりする。実際に僕の友人は経験したことがあるかもしれないが、僕は会話中に「ごめん全然聞いてなかった」と言うことがある。このクズ発言は僕のポンコツさに起因するものだったのである。
このポンコツ具合によって最近苦しんでいることがある。それは例の感染症のせいで導入されたオンライン講義だ。オンライン講義は一般的な講義とは違い、先生のジェスチャーやアイコンタクトがない。そのため耳から取り入れなければならない情報が多くなってしまうのだが、これが僕には向いていない。与えられた音声が資料のどこを説明しているのか探しているうちに、音声はどんどん新しい内容へと進んでしまう。僕の頭では全く理解が追いつかない。
はやくポンコツと大学を卒業したい。