思考記録場

日常生活の中で気になったことや、感じたこと、考えたことを記述するだけの場所。

定期をピッてしたい

僕は定期を使ったことがない。そもそも電車やバスで通学したことがない。小学校から大学まで順に徒歩、徒歩、徒歩、自転車である。最長の通学時間は中学の25分だ。それ故僕は定期を使ってピッてしたい。

 

毎日長い通学時間を憂鬱に思いながらパスケースを取り出し、改札でピッてしたい。それがあたかも日常の何気ない動作であるかのように、何食わぬ顔でピッてしたい。ピッてした後にパスケースをカバンにしまいつつ、文庫本を取り出したい。

 

通学中に文庫本を読むのも小さな夢のひとつだ。今までは高校生の頃に、朝の単語テストの対策として英単語帳を開くくらいしかなかった。長い通学時間にお気に入りのブックカバーを着けた文庫本を読みたい。川端康成なんかを読む時だけカバーを外して、周りの人に見せつけたい。僕は文学を嗜むんだぜって密かにアピールしたい。

 

しかしながら、僕にはこの夢を叶えるにあたって障害となる致命的な性格がある。僕は長時間の移動が耐えられないのだ。例え目的が旅行であろうが、帰省であろうが、関係なしに移動が辛い。他人が大量に乗り込んでいる空間が落ち着かない。心の中で何か見えない物がジリジリとすり減っていく感覚に陥るのだ。こんな感情を抱えつつ読書に没頭できないことは言うまでもない。

 

だから僕は、せめて定期をピッてしたい。