以下の物語はフィクションです。実在の団体、人物とは一切関係がありません。関係があってたまるか。
我ながらありがちな話だと思った。入学して早々に一目惚れをしてしまった。偏差値183の超トップ校に首席で入学した私は、愛読書であるキャンベル生物学を読みながら、二宮金次郎宜しく登校していた。
(絶滅危惧種の絶滅スピードの記述が誤っているではないか……帰ったら出版社に電話しよう)
そんなことを考えていた私はすっかり足元が疎かになっていたのだ。通りすがりのタスマニアンデビルに気づかず躓いてしまった。急速に天地が逆転し、思考が停止した。
気がつくと、どうやら私はお姫様抱っこをされている様だった。
「大丈夫ですか?急にシライ・グエンをキメたのかと思うくらい華麗にコケていましたよ」
頭上から地鳴りのような声がした。どうやら私を抱き上げている彼女の声のようだ。初期微動継続時間が短いなと思いつつ、ジェントルマンな私は礼を言わなければと思った。
「これはどうもありがとうございます。タスマニアンデビルに躓いてしまいました。私にはカポエラの才能があるのかもしれま……」
そこまで話して彼女の方を向くと、とんでもない光景が広がっていて言葉を失った。私の愛読書、キャンベル生物学が彼女の谷間に挟まっていた。U字谷を流れる山岳氷河とはこんなにも美しいのかと思った。
これが私と彼女の出会いである。それからというもの、私はあの2つの郡峰をしきりに思い出しては、等高線を想像で作図する毎日を過ごしているのであった。
続く(かもしれない)